<「日本一周」の一番の思い出>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


   (私なりの判断から、当時の日記をほぼそのまま書き移しています。そのため、読みにくいところが

   あるかと思いますが、ご了承願います。)

 

    「全国一周」のサイクリング中、ある村でのこと。ず〜と続く長い坂道を登っていると、前方から

   娘さんらしき人がこっちに向かって来る。『うァ〜、なんて素直そうな田舎っぽい人なんだろう!

   せめて写真にでも残せたら・・・・』と思ったものの、声をかけるキッカケもない。

 

    彼女とすれ違い約200mほど登っただろうか、頭の中からあの田舎っぽい顔が忘れられない。

   このまま登ってしまえば、もう二度と彼女と会うことはないだろう。どうしよう・・・・・。『そうだ!

   少しぐらいの恥ずかしさが何だ! 後で後悔するよりましじゃないか』と、彼女とすれ違った所まで戻って

   行った。が、彼女はいない。   ふと見ると、家の中に旦那さんらしき人と一緒にいるではないか。

   『あ〜、なんということなんだろう! あ〜残念』 せっかくの気持ちも一瞬にして消えうせてしまった。

   『あ〜、ついてないなァ〜』と、ペダルも重く、ゆっくりと登り始める。

    ・・・・どのくらい登ったことだろうか。あァ、やっぱり忘れられない。一段と増して彼女の顔が思い

   出されて来る。どうしよう。どうしたらいいのだろうか。このまま登ってしまえば、本当に俺は後悔するに

   決まっている。 『写真ぐらいだったら、きっと分かってもらえるよ。そうだよ。もし側の人が旦那さん

   だったら、その人にもお願いしよう。きっと分かって下さるよ。一度、自分で決めたことじゃないか。

   やるだけやってみよう。だめだったらダメでいいじゃないか。よし、行こう』 そう心に決め再び戻って

   行く。そして、庭に出ている彼女の前にかけ込み、こう言った。 「あの〜、すみません。実は今、

   全国一周の途中なんですが、今そこを通りかかった時、あなたがキャベツを持っておられるのを見て、

   とても田舎っぽく、素直そうな人だなァと思ったんです。それで、ぜひ写真でも思い出に撮らせて頂き

   たいと思いまして、お願いします。写真を撮らせて頂けないでしょうか」 突然のことにびっくり

   したのか、彼女は顔を真赤に染め、「いいえ、いいです、いいです」と言って照れくさがってしまった。

   困ったなァ、仕方ないので側の旦那さんに頼む。「すみません。いいでしょうか? お願いします」

   すると旦那さんは、「いいじゃないか、撮ってもらえよ」と、すぐに言って下さった。「いや〜、本当

   ですか。 ありがとうございます」 嬉しいなァ本当に! 何ていい旦那さんだろう。

 

    すぐに彼女にキャベツを持って来てもらうと、さっきすれ違った所まで無我夢中で、引張って行った。

   そして、その場所に着くなり、すれ違った時のようにポーズをとってもらい、カメラのシャッターを

   押した。“やった! やったぜ!!” それから何かの記念にと、二人の写真を撮ると、「良かったら送り

   ますので、アルバムにでも綴じて下さい。本当にありがとうございました」と言って別れた。

 

    *お二人とは、このことがきっかけで、今も交流が続いています。今思えば、なんて失礼なことを

     言ってしまったのかと思います。でも“勇気を出して本当に良かった”と思っています。

     だって、こんなに素晴らしい思い出を作ることができたのですから・・・

     旅で大切なものは、“ほんの少しの勇気”だなァ〜と、この時実感しました。 あれ以来、“前向きに、

     そして積極的に行動することができる”ようになったようにも思います。

     本当にありがとうございました。 どうかいつまでも、お幸せになってください!

 

 

 

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