【5月30日】
私を息子のように可愛がってくれたビアナードさん夫妻
ロスから三日かかって、やっとサンディエゴに着いた。
今夜は、ニュージーランドからフィジーに向かう飛行機の中で、隣に座っていたビアナードさん夫妻宅に
お世話になっている。突然の訪問にもかかわらず、約束通り温かく私を迎えてくださった。
ビアナードさんの話によると、ここから東へ行くことは、とても暑く危険だと言っている。明日は、
近くの日本人も来ることだし、色々と相談したい。ここに来る途中、自転車でアメリカを渡ると言うと、
“気ちがい”みたいに言われてしまった。
次の日、シカゴまでのバスのチケット(一週間パス:189ドル、日本で買うと半額だとか)を買った。
だいぶん、考え方が変わろうとしている。今は、気持ちとしては早くニューヨークへ行きたいし、
少しでも“いい旅”がしたいということ・・・実りのある充実した旅だ。ここからニューヨークまで
走ったとしても、いったい、それで何が残るというのだろうか。それではたして、充実した旅と言える
だろうか。ここから東は砂漠だという。折角のアメリカ、もう来れないかも知れないと思うと、少しでも
だいたいのアメリカを見ておきたいし、しかも安く旅がしたい。本当のサイクリストなら、全てを自転車で
走ることが本望だろう。しかし、それではおしいような気がするのだ。
目標は“世界一周”。それも人のためとか、名誉のためにやろうとしている訳ではない。自分の人生に
おいて、素晴らしい思い出を残しておきたいだけなのだ・・・・ただ、自転車で走ることだけが本当に
いい旅に繋がると言えるだろうか。そうは思わない。今まで私は、是が非でも“自転車しかない”と心に
思っていた。しかし、もうそのことは、あの“自転車盗難”以来、変わってしまった。
あのことが、私の考え方を変えさせたと思う。もし、自転車が無くなっても私は旅を続けるし、
“強く生きてゆく”と心に誓ったのだから・・・・あの盗難のように突如として、人生が暗くなること
だってあるのだ。今を精一杯生きることがベストなんだ・・・・。
今夜、ビアナードさんに出発のことを話すと、さすがに悲しそうだった。本当に何とお礼を言ったら
良いのか分からないくらいだ。しかし、あまりにも甘えすぎてはいけない。私の落ち着き先はここではない。
それに、あまりここに居すぎると、自分がダメになってしまう。
でも、日本に帰っても、この人達のことは忘れない。まるで自分の息子のように、私のことを可愛がって
くれたのだから・・・・
今は、まだあえて、自分に厳しくなりたい。あまりにも幸せすぎるのは今の自分には似合わない。
*それから私は、グレイハントバスを利用して、グランドキャニオンや、ラスベガス、ソルトレイク、
サンフランシスコ、そしてデンバーを通って、シカゴまで自転車は分解せず、バスの荷物置き場に
乗せてもらいました。
バスの旅は、思っていたより楽でした。というのもシートはアメリカ人用なので、とてもゆったり
していたのと、どこかのルートでいつも24時間運行しているので、宿泊費が浮かせられたのが
良かったです・・・行こうと思えば、丸二日で、ロスからニューヨークまで、このバスで安く(約30
ドル?:日本でチケットを購入した時「当時」)行けるもの貧乏な旅には魅力的だと思います。
グランドキャニオンとラスベガス