【6月18日】

 

   朝、「ありがとう」とお礼を言って去ろうとすると、「朝食を食べて行け」と勧められた。

  これで三日連続して朝食を御馳走になったことになる。それにしても暑い。34度を超えていた。

  日本を走っていた頃は、こういう日は昼の三時頃までクーラー付きの店で休んだものだ。しかし、

  ここでは、そういう訳にはいかない。まず、日本のような喫茶店はないし、家と家は芝生で仕切って

  いるので、道に座るしかないようなものだ。

 

   エリー湖を見ながらの走行は実に気持ちがいい。また、この辺は車も少なく、民家も庭が広くて

  ゆったりしている。  アシュタブラを通り過ぎ、そろそろテントを立てる所を探そうかと思って

  いるところへ、後ろから一台の車がやって来て、「ニュースペーパーのインタビューをしてくれないか?」

  と言う声がした。実に面白いものだ。新聞記者がどこからともなく現れてくる。

   さて、インタビューが始まった。女性二人でのインタビューだ。内容は、ほぼ前回通りだ。

  旨く説明出来なかったけど、「どうして世界一周をやろうと思ったか?」ということに対して、「人々の

  一生は一度しかない。だから、自分自身を試してみたい。そして、外国の友だちもたくさん作りたいんだ。

  また、このことを若い青少年たちに伝えたいんだ」と言ったが、どの辺まで通じたろうか。彼女たちから

  ミッキーマウスの人形をプレゼントしてもらった。こういうものは、やはり嬉しいものである。

 

   今夜も、女性二人だけで住んでいる民家の庭にテントを立てさせていただいた。ここでもたいへんな

  お持てなしをして戴いた。本当にこの辺の人は、すごくいい人ばかりだ。私がたまたま運がいいだけでは

  ないような気がする。

 

   思うこと・・・・都会と田舎の違い。都会の人はまず、心に余裕がないと思う。そうなってしまうのも、

  やはり、周りが騒がしく、そのようなゆったりとした心を作る環境ではなく、人も多すぎるから、少し

  人を警戒するようになってしまう。 その点、田舎の人は広いスペース、環境もいいし、そうなると

  心までゆったりして来る。だから、警戒心が少ないのであろう。

 

   これまでアメリカをサイクリングして・・・・

  私はまず、“いつ自転車を盗まれてもいい覚悟の上で旅をする” そして、それは、たくさんの友を

  少しでも多く作りたい。と、心を割り切ったのが良かったと思う。今までは、「自転車しかない」と

  いう考えに凝り固まっていた為、盗まれては大変と人を警戒していた。しかし、その考えをかなぐり捨て

  “初心に帰る。少しでも明るく、ふれあいのある旅をしよう”と思い旅を続けたので、自分自身が素直に

  出せるようになったと思う。自分自身がそうであれば、もちろん相手にも伝わる。すると不思議なほどに

  そこに素晴らしいコミュニケーションの場が広がったのだ。私は、このことをサイクリストに伝えたい。

   自転車は、もちろん大切。でも、本当の旅の意義は別にある。

  また、テントを立てる場所は必ず人の家の庭を借りるようにしている。まず安心だからだ。水もある。

  何かの時に心強いし、自転車も安全だ。 だが、ここで私なりのことだが、場所を探す時は、必ず家の

  回りに人が出ている時に頼むようにしている。というのも、突然に玄関を叩いてお願いするとなると、

  どうしても直に、今の私の状態を伝えられないからだ。

   それに、もう一つは、庭のスペースが広いことが条件だ。また、子供たちがいたら、必ず日本コインや

  折り紙を作ってやることにしている。このことは、本当に好感を持たれるからだ。何はともあれ、

  前にJACCの池本氏が言っていたように、“少しでも早く、今の自分が何者であるか、相手に分からせる

ように”自分なりに工夫しているまでのことだ・・・・。

   “心を広げよう。そしたら相手も心を広げてくれる”

 

 

 

TOPへ  目次へ戻る  次へ  次の思い出へ