【8月23日】

 

   油断も隙もあったものじゃない。ほんの10分ほどの間に、テントの外に置いていたスリッパを

  盗まれてしまった。

   早朝5時30分頃、変なおっさんが、テントの周りをうろついていたので殺気を感じた。

  すぐテントを閉め、ここを引き上げる準備をした。そして、さてテントのフロントを開け出発しようと

  すると、スリッパが無くなっているではないか。私がテントをすぐに閉めたので、その嫌がらせも

  あるかも知れないが・・・・おっさんを見つけて、靴を指さして、「お前が盗った。返せ!」と、

  ジェスチャーで言っても返してくれない。「分からない」と言い張る。おっさんしかいない。

  おっさんが盗ったことは分かっているんだ・・・・。

 

   昨夜は、レストランの人が22時頃、私が食事に来ないのを気にしてくれたのか、チキンをサービス

  してくれ、コーヒーも二杯飲ませてくれた。お礼に鶴を折ってあげた・・・・『本当に、私は何て幸せ

  なんだろう』と思った矢先・・・・・やはり、いい人もいれば悪い人もいる。決して油断してはいけない

  ことを思い知らされた。 今の私の荷物は、どれも貴重なものばかりだ。どれも無くなっては困る。

  スリッパだけで済んだことを幸いに思わなくてはいけない。それにしても驚いた。あのコロンビアでは

  決して盗られることはなかったのに・・・・。 そのため、朝、レストランの優しかった人達に、

  ろくにお礼も言えずに出発してしまった。

 

   今、私は“ラテンアメリカ”という本(日本語版)を読んでいるが、その中に「貧富の差」という

  のがある。本によれば、ブラジルでは月に5000円ほどしか収入がないらしい。その反面、政治家

  たちはいい暮らしをしている。どうして、こうしたことが生じるかは、スペイン貴族が、それも

  限られた連中だけで、国を握っているかららしい。

   ・・・・そういえば、トルヒーヨのバスの中で、10歳くらいの男の子が大声で歌を歌っていた。

  おそらく聖歌だろうか・・・“皆に幸せあれ”と、そのようなことを歌っているのだろう・・・

  歌い終わった後、バスの乗客に金をせびっていた。金をあげる人は数えるほどだった。いつものこと

  なのだろうか? その男の子の顔の表情は、「当たり前の事をしているだけさ」という感じだった。

  慣れっこになっているのだろう。

 

 

 

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